コロナ以前から日本では洋楽の市場が縮小していることもあり、アメリカや韓国といった特定の国以外の楽曲やアーティストが流行することは少なくなりました。
思い返してみると90年代には、「なぜこの曲が流行ったの?」といいたくなるようなヒット曲が色々とありました。
ランバダやスキャットマン・ジョンによる早口なスキャットなど普段は耳馴染みのないジャンルの曲や、t.A.T.uのようなロシアのデュオが日本の音楽市場でもてはやされていたのも今となっては幻かと思えるかのようです。
そんな90年代に、同じように流行ったラテンポップスのマカレナを覚えていますか?マカレナはスペイン発のサルサで、スペインのポップデュオ、ロス・デル・リオが歌っていたダンスナンバー。
ノリの良い楽曲に、覚えやすいダンスだったこともあって日本でも少し流行りましたが、世界ではもっとブームだったのです。
今回は、90年代に流行ったマカレナブームは何だったのかを振り返ってみましょう。
マカレナがヒットした流れ
「マカレナ」は90年代に流行したラテンポップスの名曲です。
ノリが良くてリズミカルな楽曲にキャッチーなダンスも特徴的で、スペインの曲ながらアメリカでも大ヒット。
歌詞はスペイン語でしたが、ダンスフロアでも大人気。踊りやすい曲として多くの人に愛されました。
マカレナはなぜそんなに大ヒットしたのでしょうか。
ベネズエラで生まれた名曲「マカレナ」
マカレナを歌っていたのはスペインのデュオグループ「ロス・デル・リオ」というアントニオ・ロメロ・モンヘとラファエル・ルイスの2人組で、結成は1963年と意外とキャリアは長いのです。
マカレナが誕生した経緯はこうです。
まず「ロス・デル・リオ」の二人は南米プロモーションツアーでベネズエラを訪れます。
現地で開催された要人も出席するようなパーティーに誘われた2人を、ベネズエラのフラメンコダンサー、ディアナ・パトリシアが躍りで歓迎します。
彼女の情熱的な踊りにパーティーの出席者が驚嘆、「ロス・デル・リオ」のアントニオ・ロメロもパトリシアのダンスにメロメロになってしまいます。
ロメロはメロメロになりながらもその場でパトリシアのダンスに合わせて掛け声をかけ、その時にかけたフレーズが「dale a tu cuerpo alegría(あなたの体に喜びを)、Magdalena」だっといいます。
ただ、「Magdalena/マグダレナ 」は朝食みたいなニュアンスになってしまう(マフィンなどをマグダレナスと呼ぶことから)」という理由もあり、マカレナに呼び方を変えたそうです。
そして、アントニオ・ロメロがホテルで5分で歌詞を書き上げ楽曲が完成したのでした。
スペインでヒットしてメキシコ、プエルトリコでも大ヒット
マカレナは「ロス・デル・リオ」が1993年に発表したシングルです。
マカレナがヒットした時にはすでに2人ともおじさんだったのも今となっては納得ですね。
このベネズエラの踊り子であるパトリシアを称えたラテンナンバーは、キャッチーなノリとリズムカルな楽曲で人気を博し、スペインで10位まで上がるヒットになり、オランダでも15位にまで浮上。
本国スペインでマカレナはそこそこヒットし、人気はメキシコに波及します。
さらに周辺国でも人気に火が点き、プエルトリコでは政治活動の非公式キャンペーンソングとしても起用され、毎日そこら中でマカレナが掛かっている状態にまでなります。
アメリカでも大ヒット!
スペインから南米辺りまで人気の広がったマカレナをアメリカに持ち帰ったのがマイアミのラジオDJであるジャミン・ジョニー・カリード。
彼がクラブでDJをやっていた時にリクエストされたのがマカレナで、ラジオ局の上司に紹介したところ「英語版も作ろう!」となったとか。
そうしてアメリカでのヒットを狙って作られたのがマカレナのBayside Boy Mixです。
その後、アメリカのレーベル「ロス・デル・リオ」がマカレナをリリースしたローカルレーベルは買収され、マカレナは海を渡ってアメリカに上陸、1995年にシングルがリリースされます。
元々キャッチーでノリが良くリズミカルなマカレナはプロモーション効果もあり、アメリカでも大ヒットしていきます。
民主党のアル・ゴア議員が党大会でこの歌とともに踊りを披露したこともヒットの要因と言われています。
この曲は発売から14週に渡ってビルボードチャートで1位になり、2013年9月に米ビルボード55周年を記念して発表されたヒットチャートHot 100 55th Anniversaryでは、歴代55年間での7位を獲得するまでに売れました。
2018年にビルボード誌が発表した、歴代シングルTOP100では一つ下がって8位になりましたが、それでもとんでもない大ヒットです。
スペイン語の歌では過去一番ヒットした楽曲です。
日本でもヒット、、、したのか?
世界でヒットしたマカレナですが、日本ではどうだったのでしょうか。
シングル「恋のマカレナ」として日本でリリースされたのが1996年7月とアメリカからは1年遅れての販売。
同年に発売されたアルバム「SHALL WE マカレナ?」はオリコンで最高順位
24位を記録、チャートへの登場回数20週以上と、名前の知られていない洋楽の割にはヒットしたのではないでしょうか。
12月には「マカレナ・クリスマス」というマカレナをフィーチャーしたクリスマスシングルまで出したのだから、実際の売上以上に日本でも浸透していたようです。
冷静に考えるとスペイン人のオジサン二人があんなに売れたの理由は理解しがたいのですが、やはり曲のノリの良さとPVで若い女の子が踊っていた簡単なダンスが成功の要因ではないでしょうか。
簡単にマネできてすぐに踊れるダンスっていいですよね。
現代版マカレナもある
日本では当たり前のようにマカレナ以降のロス・デル・リオの活躍を気にしている人はいなかったし、情報も入っては来ませんでした。
しかし、ロス・デル・リオの二人はその後も活動を継続。21世紀に入ってからも精力的に活動してマカレナ関連のコラボやゲスト出演。
マカレナをサンプリングや曲に取り入れて披露するアーティストも出現しています。
Gente De Zona/「Más Macarena」(2016)
キューバのレゲトンデュオ・Gente De Zona(グンテ・デ・ソーナ)は2000年から活動を開始している二人組で、エンリケ・イグレシアスとの曲「バイランド」のレコーディングに参加したりと活躍。
2016年には、ロス・デル・リオと共にマカレナの新バージョン「Más Macarena」をリリースしました。
どちらもデュオってことで仲良くなれたのでしょうか。
Gente De Zona側からすると子供の時に流行っていたのが大ヒットしていたのがマカレナなので、子供世代が大人になってからの懐かしさと改めて聴いたときの曲の良さに衝撃を受けたのかもしれません。
現在、YouTubeの公式MVでは、再生数77,615,708 回(2022年12月現在)を突破しており、マカレナのあの懐かしいメロディが聴けます。
Tyga /「Avy Macarena」(2019)
アメリカのラッパーTyga(タイガ)はかつてのマカレナをサンプリングした「Avy Macarena」を2019年にリリース。
マカレナのラテンテイストはそのままに、現代のヒップホップのビートに上手く取り入れています。MVの冒頭ではロス・デル・リオの2人の姿もあり、Tyga自身もあのマカレナダンスを披露しています。
ただラップの歌詞は少々下品な仕上がりになっています。
中条あやみ&福士蒼汰が“脚長”ダンス 「恋のマカレナ」ジーユースペシャルバージョン
アパレルのGUが発表した2020年度秋冬のCMでは、イメージキャラクターのモデル・女優の中条あやみさんと、メンズのイメージキャラクター福士蒼汰さんがダブル主演。
ウエストゴム仕様で楽な履き心地なのに、履くだけで脚長効果のある「カラーイージースラックス」を中条が着用しながら、「恋のマカレナ」の楽曲に合わせて、中条さんと福士さんが「イージー脚長ダンス」を披露しています。
替え歌ながらマカレナのあのメロディを聴くとつい身体が動いてしまう人もいそうですね。
マカレナが好きならこれも好きでしょ?
マカレナが好きだったなぁ、という人には、マカレナのようにラテンテイストに溢れ、リズミカルでノれる楽曲を紹介します。マカレナみたいに自然に体が動いてしまうような名曲の数々をご堪能あれ。
Don Omar – Danza Kuduro ft. Lucenzo
プエルトリコ出身のレゲトンミュージシャン・Don Omar (ドン・オマール)によるポルトガル系フランス人の歌手Lucenzo(ルセンツォ)をフィーチャーしたシングル。
ダンサンブルでエネルギッシュな楽曲はマカレナ同様聴いているだけで自然と身体が動きます!
Bananarama – Venus
マカレナよりも約10年前に発表されたBananaramaの「Venus」はディスコ世代には懐かしいはず。元々はドイツのロックバンドの曲を Bananarama がディスコチューンに完全アレンジして世界で大ヒット。日本でも倖田來未さんやhitomiさんがカバーしました。
Los Hermanos Rosario – La dueña del swing
Los Hermanos Rosario(ロス・エルマノス・ロサリオ)はドミニカ出身のメレンゲグループ。メレンゲとはドミニカ共和国で発祥した、ラテン音楽かつ社交ダンスのことです。
最近ではヒップホップやジャズの影響を受けているメレンゲもあるそうです。
Los Hermanos Rosarioのこの曲は情熱的でノリノリなダンスナンバー。マカレナに感じたノリの良さとB級的なチープさが良い意味で感じられる一曲です。
まとめ
現代では、紛争やテロ、貧困、感染症、環境汚染や気候変動と様々な脅威が私たちを取り巻いています。
ここ数年は日本だけでなく世界でもどんよりした空気を感じます。
しかし、そんな時こそマカレナのようなノリノリなラテンポップを聴いて一心不乱に踊ってみましょう。
毎日の鬱屈した心情もマカレナが吹き飛ばしてくれるかもしれませんよ。