流行が20年周期であるということはよく耳にすることですが、実際にそのような周期があるという科学的根拠はあまりありません。
とはいえファッションでもデザインでも、実際に
企業の中で中心となるのは30代の方が多く、彼らが影響を受けたものが20年くらい前のカルチャーにあり、現代風にアレンジして商品やサービスを作るから20年周期で流行がサイクルしていると見られているのかもしれません。
音楽でも20年周期でトレンドがサイクルしていると見る向きもあります。
イギリスのミレニアル世代のアイコンとも呼ぶべきデュア・リパが2020年にリリースした「ドント・スタート・ナウ」は、70年代のディスコサウンドを彷彿とさせる要素も多く、ディスコミュージックのリバイバルを感じさせます。
デュア・リパだけでなくドージャ・キャットやザ・ウィークエンドも同時期に70〜80年代を彷彿とさせるシングルをリリースしていることから局地的なディスコブームが起きているようです。
今回は、そんなディスコミュージックとはどんな音楽だったのか?またディスコミュージックの歩んできた歴史を紹介します。
局地的なディスコリバイバル
第61回グラミー賞にて「最優秀新人賞」と「最優秀ダンス・レコーディング賞」の2部門を受賞し、イギリス版グラミー賞と称される「ブリット・アワード 2018」でも5部門にノミネートされ「ブリティッシュ女性ソロ・アーティスト賞」、「ブリティッシュ・ブレイクスルー・アクト賞」の2部門を受賞したミレニアル世代のポップアイコン・デュア・リパ。
1995年生まれの彼女は、現在、世界でもホットなミュージシャンとして注目を集め、ストリーミングでも5億回以上の再生回数を誇ります。
そんな彼女が、2020年にリリースした「ドント・スタート・ナウ」は、70年代ディスコサウンドを彷彿とさせるヴァイブスに溢れ、TikTokのダンスチャレンジ動画でも効果的に使用されています。
さらに、同時期に70年代のファンクとディスコの要素を取り入れたドージャ・キャットの「Say So」、ザ・ウィークエンドの「ブラインディング・ライツ」がリリースされるなど世界では局地的なディスコサウンドのリバイバルが起きていたといっていいでしょう。
この時期は、コロナウィルスの影響により行動制限が世界中で実施されていたこともあり、よりダンスを誘発するようなサウンドが求められていたことも要因の一つかもしれません。
ディスコミュージックとは?
ディスコミュージックは、1970年代から80年代初頭にかけて一時的に流行したダンス ミュージックの一種です。
アフリカ、ラテンアメリカ、ヨーロッパの音楽スタイルの要素や、ロック、ブルースの影響など複数の音楽や文化的な影響下にあります。
ディスコの最盛期には、ディスコやナイトクラブにリスナーが集まり、ライブを見たりDJのプレイに合わせて踊ったりしました。
当時の人気ディスコアクトには、ドナ・サマー、ヴィレッジ・ピープル、グロリア・ゲイナー、クール & ザ ギャング、ビー・ジーズ、リック・ジェームスなどがいました。
ディスコミュージックは、電子機器の導入が特徴であったため、従来の音楽ジャンルよりも創造的な表現を可能にしました。
現在人気の、ダンスミュージック、ハウス、エレクトロニカなどはディスコミュージックから派生したジャンルです。
ディスコミュージックの歴史
ディスコミュージックの誕生から崩落は意外と短いものの、現在でもディスコミュージックの熱心なファンは存在しますし、新世代のミュージシャンによってリバイバルが成されています。
ディスコは 1960 年代後半にアンダーグラウンドなクラブで始まり、その後10 年間で世界で人気の音楽になりました。ディスコの隆盛と衰退の概要は次のとおりです。
ディスコは当時の社会的問題に呼応するように誕生しました。
1960年代はまだ人種差別や同性愛嫌悪の風潮があり、有色人種やゲイコミュニティに属する人間への迫害があったのです。
ディスコミュージックは、それらの危険以外にも、戦争、政治的スキャンダル、暴力、失業、犯罪率の高騰など、時代とともに高まりつつあった社会的および経済的問題から逃れるためにナイトライフ シーンに導入された側面があります。
ニューヨークのスタジオ 54 やパラダイス ガレージのようなディスコでは、あらゆる階層の人々、特に周縁化されたコミュニティの人々が安全に集まって踊ることができます。
ファンキーなサウンド、トリッピーなライト、反射するディスコ ボール、ポジティブなヴァイブスがディスコの人気を高めていきましたがまだメジャーな音楽ジャンルではありませんでした。
そんなディスコミュージックを一気にメジャーなジャンルに押し上げたのが、1977年に公開されたジョン・トラボルタ主演映画「サタデー・ナイト・フィーバー」です。
映画は大ヒットし、ビージーズ、イヴォンヌ・エリマン、クール&ザ・ギャングなどのアーティストのディスコトラックをフィーチャーしたサウンドトラックもヒット。
同時期に活躍していたロッド・スチュワートやクイーンなどのアーティストもディスコミュージックに影響を受け始め、自分たちの曲に取り入れ始めます。
しかし、ディスコの出現につながった体系的な人種差別と同性愛嫌悪は、ディスコミュージックへのアンチ層を拡大してしまいます。
それが、ディスコの没落へと繋がっていってしまいます。徐々に世論はディスコミュージックを忘れ始め、ラジオ局は徐々にディスコミュージックをプレイリストから外していきます。
約10年程度の短期的な盛り上がりでしたが、ディスコミュージックは、そのダンサブルなビートを失ったわけではありません。
ディスコミュージックは、後のポピュラーミュージックに影響を与え続けることとなります。
ディスコブームは短命だったかもしれませんが、多くのアーティストがディスコミュージックを通じて様々な名曲を生み出しました。
ディスコミュージックの特徴
ディスコは、いわゆる「4つ打ち」と呼ばれるスタイルが大きな特徴です。
「4つ打ち」とは、一小節を4/4拍子×4拍のバスドラムで打つスタイルで、音が連続して鳴るリズミカルなパターンが特徴です。このビートのルーツは、カリブ海周辺諸国のメレンゲなどのラテンダンスミュージック にあります。
ディスコミュージックを聴くと、多くの曲でエフェクターを用いたギターサウンドを確認できます。ファンクから取り入れたこのエフェクトは、ギターのサウンドを歪ませて独特なトーンを奏でています。
「チキン スクラッチ」と呼ばれるスタイルでは、プレーヤーはフレットを軽く押して離す動作を使用して、リズミカルなカチャカチャという音を出しています。
こちらもディスコミュージックにおけるギターサウンドの特徴です。
シンセサイザーの導入もディスコミュージックの特徴の一つ。
シンセサイザーのキーボードで生成されるストリングスサウンドは、ディスコミュージックのいたるところで聴くことができます。電子音楽の利用はディスコミュージックの人気のポイントであり、後のEDMやエレクトロニカへと引き継がれています。
心のこもったホーンセクションは、ファンクから影響を受けたディスコミュージックの要素です。
ディスコソングにおけるホーンの利用は大きくブラッシーなサウンドになる傾向があり、人々をダンスフロアで躍らせるためのエネルギッシュなサウンドを作り上げます。
ディスコミュージックの歌詞自体は単純な傾向があり、ほとんどの有名なディスコ ソングの中には哲学的な内容であったり抒情的な歌詞は多くはありません。
ダンス、セックス、愛、パーティーに関する歌が多く、考えるよりも踊ることがメインと捉えるとそれはそれで理にかなっています。
歌詞が何であれ、人気のディスコミュージックには強力なフックがあります。
フックとは、曲全体で何度も繰り返されるフレーズであり、曲のテーマやタイトルのこと。
ディスコソングは歌詞が少ないものの、効果的なフックが曲全体にあり、思わず一緒に歌ってしまうフレーズがたくさんあります。
まとめ
暴力や迫害からマイノリティーが身を守るために生まれたという背景を持つディスコミュージック。
その成り立ちはシリアスですが、私たちが耳にするディスコサウンドは、思わず身体を揺らして踊ってしまうエネルギッシュな音楽です。
ストレスを発散するのにも最適な音楽なので、気持ちが暗くなった時にはぜひ聴いてみてくださいね。