1990年代の少年漫画誌といえば少年ジャンプが1991年から1995年の間に売上部数600万部を超えて独走状態。
その後を少年マガジンと少年サンデーが追走するといった流れで、毎週全国の少年に面白い漫画を提供していた時期で、まさしく少年漫画においても黄金時代でした。
4番目の少年漫画誌である少年チャンピオンは、ご存じ「ドカベン」や「ブラックジャック」、「らんぽう」、「がきデカ」といったヒット作品を1970年代、1980年代に世に出した雑誌として有名でした。
では1990年代の少年チャンピオンではどんな漫画が人気だったのでしょう?今回は、1990年代の少年チャンピオンで連載されていた人気漫画を紹介します。
グラップラー刃牙
(出典:秋田商店)
現在も、「バキ道」が連載中の少年チャンピオンの守護神的存在「グラップラー刃牙」シリーズの連載が始まったのが1991年から。
そこから「バキ」、「範馬刃牙」、「刃牙道」、「バキ道」とシリーズは続いています。
「地上最強の生物」を父親に持ち、地下核闘技場のチャンピオンである範馬刃牙の活躍と成長を描いた格闘漫画ですね。
1990年代は地下格闘技場でのライバル達との戦い、刃牙の幼少期、そして参加者32人(+リザーバー4人+2匹、飛び入り参加1名)による最大トーナメントが描かれています。
特に、参加した格闘家の全ての戦いを描き切った最大トーナメントは今までの格闘漫画と比較してもスケールが大きかったことも話題でした。
この最大トーナメントで後に人気となったキャラクターも多数生み出され、毎回毎回読者の予想の斜め上をいく決着に驚いたものです。
ウダウダやってるヒマはねェ!
米原秀幸先生による青春不良ストーリー、序盤は島田亜輝と赤城直巳のヤンキーコンビが強いヤンキーと喧嘩をしていく不良漫画として王道の展開でしたが、後半はどんどん話のスケールが大きくなり、麻薬組織相手に高校生のヤンキーが暴れまくるアクション漫画に。
同時期に少年マガジンで連載されていた「湘南純愛!」や少年サンデーの「今日から俺は!」と同様に主人公が2人のバディ作品でもあり、戦ったヤンキー達が仲間になっていく展開は少年ジャンプ的であり胸が熱くなる展開も多数。
1990年代の不良漫画といえば昭和的なリーゼントとボンタンから徐々に脱却していった時期でもあり「クローズ」などを見ても分かる通りファッションスタイルもオシャレに多様化していました。
「ウダウダやってるヒマはねェ!」も登場キャラクターのファッションが一般的なヤンキーよりも確実にオシャレなのも特徴でした。
そして、「ウダウダやってるヒマはねェ!」、通称・「ウダひま」の人気キャラクターといえば「アマギン」で、漫画の特徴であるスタイリッシュなファッション性とサイコパス的な行動によって主人公たちよりも人気を得ていましたね。
浦安鉄筋家族
(出典:秋田商店)
浜岡賢次先生によるドタバタ系ギャグ漫画。主人公の大沢木小鉄(小2)とその家族、クラスメートや友人との日常を描いた作品です。
日常を描くといってもほんわかした日常ではなく、内容はひたすら下ネタやコンプライアンスに触れそうなハードコアなギャグで、実在する有名人や漫画のキャラクターに似せた登場人物がでてくるのも特徴。
2002年からは「元祖!浦安鉄筋家族」、「毎度!浦安鉄筋家族」、「あっぱれ!浦安鉄筋家族」とタイトルを変えながらシリーズは今も続いています。
1998年にはTBS系列でアニメ化、2020年にはテレビ東京系列でドラマ化までしています。
ドラマでは小鉄の父親・大鉄を主人公とした構成で、佐藤二朗さんが演じていました。
ドリフに代表されるような子供向けのギャグ漫画が、ひたすらハイテンションで毎週掲載されているのは少年チャンピオンの凄さといってもいいかもしれません。
鉄鍋のジャン
中華料理の実力者であった祖父から手ほどきを受けた主人公の秋山醤(ジャン)が、ライバル達と勝負を繰り広げていく料理漫画ですが、主人公のジャンは料理漫画では珍しいというか唯一ともいえるヒール属性の主人公。
性根は最悪で口も悪い、しかし舌は最高という独特のキャラクター。
勝つためには手段を択ばない主人公、というヒーロー像は1990年代らしいともいえます。
似たようなキャラクターには「喧嘩商売」の十兵衛が思い浮かぶほどの極悪主人公です。
「料理は勝負だ!お前らも審査員もみんな血まみれにしてやる!! ケケケケケケッ」
など自分以外の人間に毒を吐き、それでいて美味しそうな料理で相手に勝っていくジャンの料理勝負はクセになります。
覚悟のススメ
戦争と地殻変動によって文明を失い荒廃した新東京を舞台に、主人公の葉隠覚悟と敵との死闘を描いたバトルアクション漫画。
1994年から連載を開始した山口貴由先生の代表作ではあるものの、結構どぎつい描写が多く、読む人を選ぶ作品でもあります。
アクが強く独特のセンスは少年チャンピオンらしく、他の少年漫画誌では似たような漫画は見当たらないのが作品の凄さを物語っています。
合う人にはトコトンはまる作風なので、食わず嫌いせずに一度は読んでみることをおすすめします。
クローズ
(出典:秋田商店)
こちらは週間少年チャンピオンではなく月刊少年チャンピオンに掲載されていた人気作品。
「クローズ」は1990年から連載スタート、ある日札付きの不良が集まる男子校、鈴蘭高校に転校してきた坊屋春道の活躍を描いた人気不良漫画。
現実でも1990年に入ると実際の不良は昭和的なスタイルからチーマーやカラーギャングなどのように多様化して、ヤンキーファッションも様々なスタイルがありました。その流行をしっかりと漫画の中でも反映させていたのが「クローズ」でした。
不良漫画ではあるものの仲間との友情や絆を大事にしている展開が多く、少年漫画としても健全な世界観であったのもヒットした要因かもしれません。
2007年には小栗旬さん、山田孝之さんらが出演した実写映画「クローズZERO」が公開されるなど全国で「クローズ」ブームが起こりました。
漫画「クローズ」は1998年に連載終了するも、続編として坊屋春道らの世代が卒業して数年後の「WORST」が描かれたり、人気キャラクターを主人公にした沢山のスピンオフ作品が発表されており、「クローズ」関連の作品は常に少年チャンピオンに掲載されているなど、いまでは秋田書店の看板作品の一つにもなっています。
三四郎2(さんしろうのじじょう)
きくち正太先生による青春学園ラブコメディー。
主人公の三四郎に押しかけてきた許嫁の女の子も三四郎なので、三四郎2(さんしろうのじじょう)というタイトルなんですね。
1990年代初頭のドタバタ学園ものといった作風で、ギャグやお色気あり柔道展開もありといった実に少年漫画的なストーリーでした。
デフォルメされてオシャレでイラストチックなキャラクターや、和の文化に傾倒した描写も特徴的です。
少年チャンピオンのクセの強い作品の中で爽やかなテイストで読者にも人気でした。
ドカベン・プロ野球編
言わずと知れた水島新司先生の名作野球漫画「ドカベン」「大甲子園」の続編にあたる「ドカベン・プロ野球編」は1995年から連載がスタート。
ドカベンで登場した様々なキャラクターがプロ球団入りして、今度はプロ野球の世界で対決!さらに実在する球団、実在するプロ野球選手とドカベンキャラクターが対決するというドカベン版スーパーロボット大戦的な夢のような展開で話題になりました。
「ドカベン」で山田太郎や岩城達が甲子園出場をしていたのは1974年の3年間でしたが、実在のプロ野球選手との絡みが発生することで山田たちが高3の春夏甲子園を連破したのは1994年になるなど、いきなり設定が数十年先の未来になりました。
「ドカベン」時代は時間軸の経過に関しては無頓着でいられましたが、実在の選手が登場するにあたってプロ野球のシーズンをこなしていくことで「ドカベン・プロ野球編」の時間の経過は異様に早くなります。
それは山田の妹サチ子が「ドカベン」では小学生だったのが、この漫画での成長が著しく早くなり大人の女性になっていくことにあらわれています。
山田は西武ライオンズ、里中は千葉ロッテマリーンズ、殿馬はオリックスへと入団したことで実在のプロ野球選手との名勝負が生まれたのは胸が熱くなりました。
まとめ
1990年代に少年チャンピオンに連載されていた人気漫画を振り返ってみました。
当時の発行部数では少年ジャンプや他の少年漫画誌に負けてはいたものの、今読み返してもしっかりと面白い、それでいて唯一無二の作品がたくさん掲載されていたのが少年チャンピオンです。
少年チャンピオンの漫画を読み逃しているのであれば、今からでも読み直すのをおすすめします。