1980年代後半にXやBUCK-TICKがデビューし、後のヴィジュアル系バンドに影響を与えたDER ZIBETがメジャーデビューをしたことで、日本にヴィジュアル系バンドが根付き始めたといわれています。そして1990年代に入りヴィジュアル系は黄金期を迎えます。
Xは一早く日本武道館で公演をおこない、ヴィジュアル系バンドの専門誌も刊行。LUNA SEA、L’Arc-en-Ciel、黒夢といった後の人気バンドも1990年代初頭にデビューを果たし、ヴィジュアル系は市民権を得てどんどんとメジャーな存在になっていきました。
今回はそんな1990年代のヴィジュアル系バンドシーンを盛り上げたバンドを紹介したいと思います。
X
1985年にインディーズでデビュー。スプレーで逆立てたヘアースタイル、ド派手なメイク、過激なライブパフォーマンスですでにライブハウスシーンでは有名でしたが、さらに知名度を高めるために日本テレビのバラエティ番組「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」に出演。
「早朝ヘビメタ」などの企画にステージ衣装のまま参加してお茶の間に登場、全国区の知名度を得ることに成功します。
1989年にメジャーデビュー、1990年に日本武道館公演、1992年には日本人アーティストとしては初の東京ドーム3Daysでのライブも開催。1990年に入ってからのXの人気は凄まじく社会現象化したといってもいいでしょう。なんせ日清から「カップヌードルX味」が出たり、1992年の紅白歌合戦にも出演するくらいですから。
その後は、ソニーからワーナーへの移籍、X JAPANへの改名、ヴォーカルTOSHIの脱退、1997年12月31日に東京ドームでのラストライブをもって解散、メンバーのHIDEの急逝と90年代という時代を目まぐるしく駆け抜けていきました。
ヴィジュアル系バンドの枠を軽々超え、メジャーアーティストとして成長したXは2007年に再結成。メンバーは1990年とは異なるものの世界的な活躍を見せています。
BUCK-TICK
1985年にインディーズで活動スタート、1987年にはビクターからメジャーデビューを果たしていたBUCK-TICK。デビュー当初は逆立てたヘアースタイルにメイクというヴィジュアル系バンドらしい出で立ちではありましたが、1990年代に入ると音楽性は以前までのビートパンクよりもオルタナティブロック、テクノ、ポップス的な側面が強くなり、ビジュアルも多様性が増していきます。
特に1991年にリリースされたアルバム「狂った太陽」ではビートパンク的なタテ揺れから、ダンスミュージック的なヨコ揺れグルーブへと傾倒していきます。当時イギリスで人気だったジーザスジョーンズのようなダンスミュージックやアシッドハウス的影響も感じられます。
1990年代のBUCK-TICKは形骸化されたヴィジュアル系バンドからは早々と逸脱して、よりミュージシャンとしてコアな方向へとシフトしていくことになります。
BY-SEXUAL
大阪出身のBY-SEXUALは1990年にポニーキャニオンからデビュー。メンバーは全員未成年で、ヴィジュアル系バンドらしくヘアスプレーで固めた髪の毛をカラフルに染め、メイクもしっかりとしていました。
メンバーも若く演奏技術が不安定なところがあったものの人気はあり、映画の主題歌とのタイアップもありました。1998年のメンバー脱退を機に活動を休止してしまいましたが、2011年、2016年にイベントの為だけに復活はしていました。
ダウンタウンの浜田雅功さんは、フジテレビ系列のバラエティ番組「夢で逢えたら」の音楽コーナー「バッハスタジオII〜ホコ天キングへの道〜」でBY-SEXUALと共演した時のことを受けて「日本一下手なバンド」と発言していたというエピソードもあるほどなので、演奏技術はそこそこなのかもしれません。
GRAY
今や大物ロックバンドの風格に溢れているGRAYもスタート時はヴィジュアル系バンドでした。1994年にXのYOSHIKIさんのプロデュースでメジャーデビュー。初期は5人組でビジュアル系らしいメイクや衣装をしていました。
「HOWEVER」や「Winter,again」などの大ヒット曲も生み出し、99年に幕張メッセで開催した「GLAY EXPO ’99 SURVIVAL」で約20万人以上の観客を動員する等、ビジュアル系の枠を大きく飛び越え、今では誰でも知っている存在にまで上り詰めました。逆にビジュアル系出身ということを知らない人も多いのではないでしょうか。
LUNA SEA
1989年に結成&インディーズで活動開始、1992年にメジャーデビューとヴィジュアル系がブームになっている真っ只中に登場したLUNA SEAは「ROSIER」のヒットもありすぐに人気バンドの仲間入りを果たします。
1995年には東京ドーム公演を開催し順風満帆のように見えましたが、1996年に活動休止宣言。1997年12月の再開ライブまではメンバーが各々ソロ活動を行っていました。
2000年に終幕発表がされバンドは活動を終えましたが、2007年に一夜限りの再結成。その後も記念日や節目に復活ライブをしています。
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Janne Da Arc
結成は1996年で、メジャーデビューは1999年。インディーズで活動中はヴィジュアル系らしい派手なメイクと衣装で活動し、赤坂ブリッツに2千人を動員するくらい人気がありました。
テレビでもヴィジュアル系バンドを取り扱う専門番組ができるほど、ヴィジュアル系バンドは若いファンを中心に人気があった時代です。Janne Da Arcもメディアの露出を増やして人気を高めていきました。
1999年のメジャーデビュー時には「ヴィジュアル系バンドの最終兵器」との触れ込みで、演奏技術も高くメロディアスな曲展開に期待が高まりました。
しかし、人気が高くなるごとにメイクは薄くなり、最終的にはビジュアル系ぽさはほとんどないようなナチュラルメイクに落ち着いていきます。
人気はありましたが2007年に活動を休止、2019年にバンドは解散を発表。その後、ボーカルのyasuはソロプロジェクトのAcid Black Cherryに専念し2017年まで活動を続けました。
黒夢
1991年に岐阜で結成され、インディーズ時代は名古屋で活動。一度はYOSHIKIさんのレーベル「EXTASY RECORDS」からのデビューが進みますが、1994年に東芝EMIからメジャーデビュー。
活動当初からメンバー移動は激しく、2人しかいない時もありました。
デビュー当初はビジュアル系バンドらしいスタイルでしたが、音楽性はアルバムを出すごとに変わりキャッチーな曲をリリースしている時期もありました。
1999年に無期限活動停止を発表しますが、それ以前から音楽性はパンクに傾倒していた感じで男性ファンにも支持されていました。2011年に再結成、2014年に最後のツアーを行いました。
2016年には清春さんの会社が税金を滞納して「黒夢」の商標がオークションにかけられる事件も話題になりました。
L’Arc-en-Ciel
1994年にメジャーデビューし、ヴィジュアル系の先駆けとなったXやBUCK-TICKよりも遅れてシーンに登場しました。
インディーズ時代から人気も高く動員も多かったのでメジャーデビュー後もすぐに人気が出るかと思いきやそうでもなく、売り切れが続かない期間が1年ほどありました。
その後は、アニメ「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」エンディングテーマ、「D・N・A² 〜何処かで失くしたあいつのアイツ〜」オープニングテーマなど豊富なタイアップもあり人気は急上昇。
その後は活動休止と再会を繰り返しながら、活動はワールドワイドになっています。
バンドがヴィジュアル系かどうかで問題になるケースが多々あるが、L’Arc-en-Cielはヴィジュアル系と呼ばれたくない側のバンドで有名でした。NHKの音楽番組「ポップジャム」出演時にベースのtetsuさんがMCにヴィジュアル系と呼ばれて帰ってしまったことは今でも「ポップジャム事件」として話題にあがるほどです。
MALICE MIZER
衣装、楽曲、メイク、ステージセットにまで世界観を徹底させていたのがMALICE MIZER。クラシック音楽とロックを融合したのが大きな特徴で、衣装やステージセットも中世ヨーロッパ的なデザインを反映させていました。
活動初期はライブハウスの照明じゃなくて、ろうそくを灯りにしていたというエピソードからも分かるようにライブの演出にこだわりが強いバンドです。
ヴォーカルのGacktさんは有名なバンドですが、Gacktさんは2代目ヴォーカリストでオーディションからの加入でした。Gacktさんが有名になりメディア出演の機会が増えましたが、それが他のメンバーとの対立を生み1999年に脱退。
MALICE MIZERは、その後3代目ヴォーカリストのKlahaさんを迎えて活動を再開しますが、2001年に活動を停止してしまいます。
La’cryma Christi
La’cryma Christiで「ラクリマ・クリスティー」と呼びます。キリストの涙を意味するバンド名には「誰も見たことがないキリストの涙の色を音楽で表現したい」という壮大な想いが込められています。
1991年から前身バンドでインディーズデビュー、1997年にメジャーデビューして2007年に一度解散。2009年に一夜の復活を遂げましたが、その後もアニバーサリーツアーを慣行しています。
MALICE MIZER、FANATIC◇CRISIS、La’cryma Christi、SHAZNAの4バンドはメジャーデビューや活動時期が同時期だったため「ヴィジュアル系四天王」とも呼ばれていました。
SHAZNA
1997年にシングル「Melty Love」でメジャーデビュー、その次の一風堂の「すみれ September Love」をカバーしたシングルもオリコン初登場2位を記録して、すぐに人気バンドの仲間入りを果たしました。
特に女性のように美しくてしなやかなヴィジュアルのヴォーカルのIZAMさんの人気は高く、「SHAZNA現象」と呼ばれるようなブームに発展。メンバーは睡眠時間がほぼないほどに多忙になっていきました。
デビューから3年後の2010年に一度活動を休止し、2006年に活動を再開。2009年に区切りとして解散。さらに2017年に活動を再開しています。
IZAMさんは1999年にモデルの吉川ひなのさんと結婚、2006年に女優・グラビアタレントだった吉岡美穂さんと再婚したことでも話題になりました。
DIR EN GREY
1990年代最後の大物ヴィジュアル系バンドともいえるのがDIR EN GREYです。
1997年に大阪で結成され、活動後すぐにCOLORのボーカリストDYNAMITE TOMMYさんに見出されてインディーズデビュー。
Dir en greyのデビューしてからの人気は凄まじく、メジャーデビューする前のインディーズ時代に日本武道館でライブを開催しているほどです。
1999年にYOSHIKIさんプロデュースで、シングル「アクロの丘」「残-ZAN-」「ゆらめき」3枚同時リリースでメジャーデビューを果たします。
ヘヴィメタルやハードコアをベースとした音楽はヴィジュアル系以外のロックファンからも支持が高く、現在では世界各国で活動しています。
海外での活動が増えたからか、気分的なものかは分かりませんが2005年以降はヴィジュアル系らしいメイクや衣装での活動はおこなわなくなりました。
まとめ
1990年代はヴィジュアル系バンドも黄金期で、特に初期はXの影響もありヴィジュアル系という言葉自体が世の中に広まっていきました。
1990年中期からは過激なメイクや衣装も徐々にソフトになっていき、ヴィジュアル系バンドも多様性が増していきます。
現在では大物バンドとなってしまったLUNA SEAやGRAYのデビューも1990年代のビジュアル系シーンからと、日本の音楽界にとっても大きく貢献した時代でしたね。
元はヴィジュアル系バンドだったの?という人も多かったのではないでしょうか。
現在も活動を続けているヴィジュアル系出身のバンドにはまだまだ頑張ってもらいたいものです。
ヴィジュアル系ではありませんが最近「ジデン」という方が90年代テイストの楽曲を制作しています。
90年代をより感じられる楽曲が多かったので参考までに聴いてみるのもいいかもしれません。