前回は1990年から1994年までのヒット曲について紹介してきました。次に1995年から1999年までのヒット曲についてランキングで紹介していきます。
1995年ヒット曲
90年代中盤は震災や大きな事件が起こったことで世相も暗くなりがちに。
1995年にも戦後日本最大級の阪神・淡路大震災が発生、ボランティアや市民グループの社会活動が活発化していくきっかけとなりました。社会が不安定だからなのか「愛」や「絆」を扱った曲が増えてきた印象があります。
1位:LOVE LOVE LOVE/DREAMS COME TRUE(248万枚以上)
豊川悦司&常盤貴子出演ドラマTBS系「愛していると言ってくれ」の主題歌として大ヒットしたドリカムの大名曲。普遍的な愛を歌ったラブソングの定番曲でもあります。
ドラマは障害を乗り越えていく愛を描いたストーリーでしたが、この曲も徐々に盛り上がっていく7分30秒越えの壮大なラブバラードです。
2位:WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーブメント/H Jungle With t(213万枚以上)
90年代といえばダウンタウンがお笑いで天下を獲ったイメージがありますが、そのダウンタウンの浜田雅功さんが、これまた90年代の音楽シーンを席巻していた小室哲哉さんとコラボレーションしたユニット「H Jungle With t」で発表したのがこのシングル曲です。
Jungleは小室哲哉さんが当時ハマっていたダンスミュージックのジャンルで、ユニット結成の発端はダウンタウンがMCを務めていた音楽番組「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」に小室さんが出演した際に、浜田さんが「僕にもヒット曲プロデュースして下さい」とお願いをしたことからでした。
3位:HELLO/福山雅治(187万枚以上)
フジテレビのドラマで本木雅弘さんと深津絵里さんが主演を務めた「最高の片想い」の主題歌でした。このシングルは累計で187万枚を超える大ヒットとなり、見事95年を代表する曲となりました。
ドラマはヒロインの片思いをロマンチックに描いたストーリーで、福山雅治さんによるストレートで爽やかなメロディの曲も相まって多くの感動を呼びました。
4位:Tomorrow never knows /Mr.Children(276万枚以上)
Mr.Childrenの快進撃は95年も続き、フジテレビ系ドラマ「若者のすべて」主題歌となった「Tomorrow never knows」はダブルミリオンヒットとなり、所属していたトイズファクトリーから発売されたシングル曲の中でも一番売れました。
洋楽的な時代と対峙するロックとしての音楽スタイルと、90年代月9ドラマの主題歌としての歌モノ的なスタイルを両立させたMr.Childrenならではのナンバーですね。
5位:シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜/Mr.Children(181万枚以上)
「Tomorrow never knows」がピュアで内省的な世界観の曲である一方、「シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜」は同年に発売されたシングル曲でありながら方向性が全く違う曲に仕上がっています。
エルヴィス・コステロを彷彿とさせる小洒落てポップなロックで、シニカルでユーモアな歌詞が特徴的です。
またこの作品で発生した売上や印税を全て、この年の1月に発生した阪神・淡路大震災に義援金として寄付したことも大きな話題となりました。
そして90年代のヒット曲にしては珍しく、この曲はドラマやCDとのタイアップもなく大ヒットしました。
1996年ヒット曲
1996年にはゲームボーイでポケットモンスターが発売。
令和の今では世界中の人々が夢中になっているポケモンも、初出しはこの年です。90年代になるとファッションなどの流行がメディアからの発信だけではなく、消費者の側からも発生する現象が頻繁に見られるようになりました。
特にコギャルと呼ばれる都内の女子高生を中心に、ルーズソックス、ガングロメイク、デコった携帯電話など独特なファッション文化は一大ブームとなりその後日本中を席巻していきました。
1位:名もなき詩/Mr.Children(230万枚以上)
前作の「シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜」から半年という短いスパンで発売され、発売された週で100万枚を突破したMr.Children10枚目のシングル。
メジャーデビューが92年で、96年にはミリオンヒットが当たり前の状態にあるくらい当時のミスチルの急成長ぶりは凄いものがありました。フジテレビ系ドラマ「ピュア」の主題歌であり、その7年後にはCMでも起用されるなど時代が移り変わっても人気のある楽曲です。
2位:DEPARTURES/globe(228万枚以上)
竹野内豊さんと江角マキコさんが出演するJR SKISKIのCMソングであり、globe4枚目のシングルです。
ピアノ主体で徐々に盛り上がっていく曲調に、メインボーカルのKEIKOさんの歌唱力が遺憾なく発揮された名曲ですね。
2018年には西武鉄道グループのプリンススノーリゾートキャンペーンの「SKI!PRINCE!AGAIN!」テーマのCMソングにも起用されるなど世代を超えて愛されています。
3位:LA・LA・LA LOVE SONG/久保田利伸with NAOMI CAMPBELL(185万枚以上)
フジテレビ系テレビドラマ「ロングバケーション」の主題歌でもあり、イギリス出身の世界的なファッションモデルのナオミ・キャンベルとのコラボレーションも話題を呼びました。
コラボレーションした理由も、久保田利伸さんとナオミさんが偶然同じマンションに住んでいて意気投合したからというもの。
4位:チェリー/スピッツ(161万枚以上)
スピッツの通算13枚目のシングルである「チェリー」は、当時はドラマやCMとのタイアップがない状態でミリオンセラーを達成しました。
君を忘れない、で始まるピュアな歌詞と切ないメロディが当時の若者の共感を呼んだ結果といえます。2019年に放送されたNTT東日本のテレビCMで遅いタイアップが実現したのもいい話ですね。
5位:花 -Memento-Mori- /Mr.Children(153万枚以上)
前作「名もなき詩」に続いて今作もミリオンヒットとなりました。
発表するシングルがミリオンヒットを連発するなど当時のMr.Childrenの圧倒的な人気を感じさせてくれます。「Memento-Mori」とは、ラテン語で「死を想え」という意味で、藤原新也の著書から取られています。
曲調は暗くマイナー調で始まる楽曲、内省的な歌詞世界がMr.Childrenらしさ満載です。ノンタイアップながら153万枚を超え、スピッツの「チェリー」とは同じ日に発売でオリコンの1位を競い合った経緯があります。
1997年ヒット曲
1997年は消費税が5%に引き上げられた年ですが、まだ5%だったという印象ですね。
この年の出来事として記憶されているのは、フジテレビの新社屋がお台場に移転したこと、東京アクアラインの開通などでしょうか。
音楽好きにはなんといっても第一回フジロックの開催ではないでしょうか。
この時は苗場ではなく、富士天神山スキー場での開催でしたが大型台風が直撃。ヘッドライナーのレッド・ホット・チリ・ペッパーズは嵐でも演奏をし続けて今では伝説となっています。
1位:CAN YOU CELEBRATE?/安室奈美恵(229万枚以上)
安室奈美恵さんのシングルとしては通算9枚目で、発表したシングルの中でも最大ヒットを記録した結婚式の定番曲。
フジテレビ系月9ドラマ「バージンロード」の主題歌でもあり、安室さん自身が出演した日立マクセル「プラチナ&ゴールドMD」のCMでも起用されたダブルタイアップ曲です。
第39回日本レコード大賞の大賞、第11回“日本ゴールドディスク大賞”ソング・オブ・ザ・イヤー(邦楽部門大賞)を受賞し、この曲で紅白にも出場するなど時代を代表する一曲でもあります。
2位:硝子の少年/KinKi Kids(178万枚以上)
KinKi Kidsは1993年からアイドル活動をしていましたが、メジャーデビューはしていませんでした。「硝子の少年」はKinKi Kidsにとっての記念すべきメジャーデビューシングルであり、同年に設立されたレコード会社「ジャニーズ・エンタテイメント」からの初めての作品です。
制作陣は松本隆、山下達郎、藤島メリー泰子と豪華すぎるメンバーで、ジャニーズ事務所のドンでもあるジャニー喜多川さんからは「この子たちは人気があるからミリオンね」というお達しがあったので、プロデュースもしていた山下達郎さんは気が気じゃなかったという話が今聞くと面白いですね。
3位:ひだまりの詩/Le Couple(155万枚以上)
「そこに愛はあるのかい?」が流行語にもなった江口洋介さん主演のドラマ「ひとつ屋根の下2」の挿入歌としてヒットしました。
パート1でもある「ひとつ屋根の下」は93年のヒットドラマで月9でホームドラマを流行らせたエポックメイキングなドラマでもありました。温かみのあるメロデイが印象的なこの曲は、ドラマのストーリーも相まってお茶の間に愛されるナンバーでした。
4位:FACE/globe(132万枚以上)
メインボーカルKEIKOさんの歌唱力が際立つglobe8枚目のシングルです。
恋に泣き悲しむ女性像ではなく、自立して自身で道を切り開こうとする逞しさを感じさせてくれる一曲。フジテレビのドラマ「彼女たちの結婚」の主題歌であり、globeにとっては「DEPARTURES」に次ぐヒット曲となりました。
5位:STEADY/SPEED(127万枚以上)
「STEADY」はSPEEDにとっての2枚目のシングルであり、初のミリオンヒットとなったシングル楽曲。ドラマ「イタズラなKiss」の主題歌としても印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
切ない恋心を歌ったラブソングは当時SPEEDと同年代の女の子たちのハートをがっちりと掴んでいました。
関連する記事について
1998年ヒット曲
1998年はスポーツに関連したトピックが多いのが特徴です。
冬季オリンピックが札幌大会から26年ぶりに長野で開催され、男子チームのスキー ジャンプ競技で活躍した原田選手を筆頭に、スピードスケートの清水選手、西谷選手、モーグルの里谷選手らが金メダルを獲得して日本中がフィーバーしました。
また横浜ベイスターズが38年ぶりにセリーグで優勝を決め、燃える闘魂で一世を風靡したプロレスラーのアントニオ猪木さんが引退したのも98年です。
1位:誘惑/GLAY(162万枚以上)
エッジの効いたハードロックナンバーがGLAYらしいシングルです。同じくシングルの「SOUL LOVE」と同時発売で、ファンの間では「誘惑」派と「SOUL LOVE」派に分かれての熱い議論があったとか。
累計で160万枚以上を売り上げ、現在でもカラオケで多くの人に歌われている名曲です。
2位:夜空ノムコウ/SMAP(162万枚以上)
「夜空ノムコウ」はSMAP通算27枚目のシングルで、フジテレビ系バラエティ番組「SMAP×SMAP」のテーマソングとしても大ヒット。
作曲が大阪のシンガーソングライター川村結花さん、作詞がスガシカオさんによる部分も話題になりました。
生きていく中で誰しもが抱える葛藤を歌った姿に多くの人が共感し、現在では音楽の教科書にも掲載される、90年代、そしてSMAPを代表する名曲です。
3位:my graduation/SPEED(147万枚以上)
SPEEDの6枚目のシングル「my graduation」は当時の卒業ソングの定番であり、累計で147万枚を売り上げたヒット作です。サビでは歌のキーが下がり気味で、一転強めの歌唱になるので良い意味で違和感のある一曲です。
4位:タイミング/BLACK BISCUITS(147万枚以上)
日本テレビ系「ウッチャンナンチャンのウリナリ!!」番組内でウッチャンナンチャンの南原清隆さん、キャイ~ンの天野ひろゆきさん、ビビアン・スーさんの3人によって結成された番組企画ユニットがBLACK BISCUITSでした。
元々はウッチャンナンチャンの内村光良さん(TERU)、タレントの千秋さん(CHIAKI)、キャイ〜ンのウド鈴木さん(UDO)の3人による企画ユニットのポケットビスケッツのライバル的存在として後発で作られたのがBLACK BISCUITSでしたが、「タイミング」はその名の通りタイミングも良くミリオンヒットとなりました。
POCKET BISCUITS、BLACK BISCUITS共に100万枚を超えるセールスを達成しており、当時の番組人気の高さがうかがえます。
5位:SOUL LOVE/GLAY(137万枚以上)
1位の「誘惑」と同時2枚リリースされたことでもおなじみのGLAYの1998年発表のシングル。MVではメンバーの4人がはしゃいでる姿が見れるのでファンには人気が高い曲でもあります。
ライブではお客さんも一緒にシンガロングできる曲として有名です。
1999年ヒット曲
1999年といえば石原慎太郎さんが都知事に就任した年でもあり、GLAYが幕張メッセに20万人を集めたライブも話題となりました。
また、まだ一般的ではないものの前年のiMac登場を受けてアップル社のiBOOKが発売されたのもこの年。
iモード、EZweb、J-SKYなどの誕生も1999年で今まではPCでしか使えなかったEメールが携帯電話でも使えるのが革命的でした。
インターネットの普及により若者のコミュニケーション手段が本格的に携帯電話に移行していった時期ですね。
1位:だんご3兄弟/速水けんたろう、茂森あゆみ(291万枚以上)
NHK教育テレビ「おかあさんといっしょ」内で流れるオリジナル曲として異例の大ヒットを記録しました。
作詞・プロデュースは、当時CMプランナーだった佐藤雅彦さんで、串に刺さった団子を兄弟に見立てるシュールな世界観とタンゴ風の楽曲が印象的でした。
90年代には珍しくNHK教育テレビ発のヒットとなりました。
1999年オリコン年間シングルチャート1位、日本レコード大賞特別賞、ゴールデン・アロー賞、日本ゴールドディスク大賞を受賞する等、90年代を締めくくる年に相応しい大ヒットでした。
2位:Automatic/宇多田ヒカル(206万枚以上)
発売は1998年の年末ですが1999年の楽曲としてカウントされています。
今や世界的なアーティストとなった宇多田ヒカルさんのファーストシングルで出荷枚数が250万枚以上で、売上枚数が200万枚を超えるモンスター級のヒット曲となりました。
宇多田ヒカルさんの歌唱は、日本語歌詞の歌でありながらR&Bのグルーヴ感と心地良さを表現していることが特徴で、歌詞の発音とリズムのアクセントの強弱を一致させることでリズムを強調して、いわゆる横揺れのグルーヴ感を作り出しています。
3位:Winter, again/GLAY(164万枚以上)
北海道函館出身のGLAYならではの冬のラブソング。
冬になると聴きたくなる人も多いことでしょう。GLAYの通算16枚目のシングルであり、メンバーの故郷である北海道を歌い、雪で白くなった北海道の情景が浮かぶような名曲です。MVも北海道美瑛町で撮影されており、北海道尽くしの一曲です。
4位:A /浜崎あゆみ(162万枚以上)
1999年にブレイクし始めた浜崎あゆみさんのシングル。浜崎あゆみさんはデビューが1998年で、99年から2000年にかけて圧倒的なシングルリリースとメディア露出で戦略的に売れていきます。
Aは「monochrome」、「too late」、「Trauma」、「End roll」のシングル4曲を収録したアルバム的な位置づけのシングル作品で、収録曲全てがタイアップ曲でもあった影響もあり162万枚を突破するミリオンヒットとなりました。
浜崎あゆみさんの人気を一気に押し上げた役割を果たしたシングルでもありました。
5位:energy flow/坂本龍一(155万枚以上)
「energy flow」は1999年5月にリリースされたシングル「ウラBTTB」(ウラ・ビー・ティ・ティ・ビー)に収録された楽曲です。
シングル自体は3つのピアノ楽曲で構成されており、その中の一曲です。元々は三共製薬「リゲインEB錠」のCM用の楽曲でしたが、好評だったため急遽シングル化された経緯があります。
番外編
ミリオンヒットを連発してきた90年代楽曲について、一覧で紹介してきました。J-POPの基礎を作り上げてきた90年代の人気はまた上がりつつあり、90年代をテーマにした楽曲を制作する人も多いです。
90年代テーマの楽曲を制作する人に「ジデン」という方がいます。90年代のテイストを残しつつ、現代風にアレンジした楽曲は、懐かしさと新しさを感じることができるので参考にしてみるのもいいかもしれません。
まとめ
今回は90年代のヒット曲ランキングを年毎に紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
90年代は過去に例がないくらいにミリオンヒットが続出した世代です。それはカラオケの流行やトレンディードラマの人気も大いに関わっています。
現在でもカラオケで歌われているヒット曲の多いこと。90年代にはまだ生まれていなかった世代も親世代の影響で90年代のJ-POPに詳しかったりもするので、その影響力は計り知れません。
90年代というJ-POP黄金期に発表された名曲は、今回のランキングでは紹介できないほど沢山存在しています。今回の記事をきっかけに懐かしの90年代J-POPを探ってみるのも面白いかもしれませんよ!