「週刊少年ジャンプ」「週刊少年マガジン」と共に少年漫画誌をリードしてきた「少年サンデー」
1959年の創刊から、「うる星やつら」(1978年)、「タッチ」(1981年)、「うしおととら」(1990年)「名探偵コナン」(1994年)、「MAJOR」など幅広いジャンルで名作漫画を世に送り出していました。
「少年サンデー」は他の少年漫画誌よりもラブコメや恋愛漫画に強みがあり、女性漫画家の起用も業界の中では早かったという特徴があります。
そのため雑誌の作りも爽やかで、女性の読者も多かったように思います。
今回は1990年代の「週刊少年サンデー」に掲載されていた漫画を振り返ってみました。
らんま1/2
(出典:小学館)
高橋留美子先生による不朽の名作「らんま1/2」は1987年から1996年まで連載されていました。前作「うる星やつら」に勝るとも劣らないドタバタ格闘コメディーで、高橋先生ならではの世界観やキャラクターが魅力的な作品です。
水を被ると男から女に変わったり、性別だけではなくパンダや猫や豚など種別も変わるといったシチュエーションが破天荒すぎて子供ながらに度肝を抜かれたものです。
それでいてちゃんと早乙女乱馬とその許婚・天道あかねのラブコメとして成立しているのも高橋先生の漫画化としての技量の高さがうかがえます。
連載がスタートするやすぐに「少年サンデー」の看板漫画となり、1990年代前半の「少年サンデー」を盛り上げました。
1989年にはフジテレビ系列でアニメもスタートして人気はより高まっていきます。現在でも人気のある作品で、世代や性別に関係なく根強くファンに支持されています。
その人気の高さから連載終了からだいぶ時間の経った2011年には天道あかね役を新垣結衣さん、乱馬(男)を 賀来賢人さん、乱馬(女) は夏菜さんというなかなか強引なキャスティングで実写ドラマ化も実現。
キャスティングだけ見ると当時の若手俳優が終結していて凄いのですが、ファンの間ではそこまで大きな話題を呼びませんでした。
犬夜叉
(出典:小学館)
1990年代前半から中盤まで「少年サンデー」の看板漫画となっていた「らんま1/2」の次の作品が「犬夜叉」です。
作者はこちらも高橋留美子先生で、作風は「うる星やつら」「らんま1/2」と続いてきたドタバタ・アクション・ラブコメディーの系譜からは外れた冒険ファンタジー。高橋先生による怪奇サスペンス、ホラーの「人魚の森」「人魚の傷」といった「人魚シリーズ」の雰囲気に近い作品となっています。
舞台も戦国時代、主人公は妖怪と人間の間に生まれた半妖の犬夜叉、そして現代からタイムスリップしてきた女子中学生・日暮かごめによる冒険アクションストーリー、と実に少年漫画らしい作品です。
「少年サンデー」に1996年から2008年まで連載され、2000年にはアニメ化もされています。同じく2000年には劇団☆新感線 + パルコプロデュースで舞台化もされており、連載終了後もファンに愛されている作品でした。
今日から俺は!!
2018年に急遽実写ドラマ化が実現して、昔から「少年サンデー」を愛読していた方は非常に驚いたのではないでしょうか。
原作である漫画の「今日から俺は!!」は、1988年に「増刊少年サンデー」で連載がスタート、1990年に本誌である「週刊少年サンデー」に移籍してから1997年まで連載が続いた西森博之先生による漫画作品です。
連載から20年近くを経て、福田雄一脚本で実写ドラマ化されるとは誰も想像していなかったことでしょう。さらには映画化までしちゃうのだから分からないものです。
ストーリーは、ワル知恵の働く金髪・三橋と、正義感の強くて真面目なツンツン頭の伊藤による高校デビューヤンキーコンビによる学園漫画で、サンデーらしくポップな絵柄で時には熱く激しく不良同士で喧嘩し合うのが人気でした。
同時期には「カメレオン」「疾風伝説 特攻の拓」「湘南純愛組!」といったレベルの高い不良漫画が「週刊少年マガジン」で連載されており、ヤンキー漫画の取り扱いは講談社の特権のように思われていましたが、「今日から俺は!!」は少年誌や「少年サンデー」らしさから逸脱しないヤンキー漫画として実に秀逸でした。
ギャグのテイストも多く、不良漫画が苦手な人でも読みやすい作品ですね。
うしおととら
妖怪退治の槍「獣の槍」をひょんなことから抜いてしまった主人公・蒼月潮(通称:うしお)と妖怪のとらによる妖怪ファンタジー・バトルアクション漫画が「うしおととら」です。
1990年に連載がスタートし1996年まで掲載が続きました。元々はうしおの実家のお寺に封印されていたとらも凶悪な妖怪で、封印が解かれたことをきっかけにうしとととらが様々な妖怪と戦いを繰り広げるストーリーです。
最初はいがみあっていたものの、回を重ねるごとに1人と1匹の絆は強くなっていき、いわゆるバディ(相棒)作品としても楽しめる傑作漫画です。
藤田和日郎先生による荒々しいタッチが作品の中に躍動感を与え、妖怪とのバトルシーンは迫力に溢れています。
妖怪側にも戦いを余儀なくされている背景があることでストーリーに深みが生まれ、ただの勧善懲悪に終わらないので大人も読んで楽しめる作品です。
H2
(出典:小学館)
あだち充先生といえば「タッチ」がいうまでもなく有名ですが、実は「タッチ」から「H2」の連載までには6年以上経過しているのです。
野球漫画の連載が続くと擦り減ってしまうからと意図的に野球漫画を描かず、ソフトボール漫画「スローステップ」、水泳漫画「ラフ」、時代劇「虹色とうがらし」と細かく連載をしてきたあだち先生が満を持してスタートさせたのが「H2」です。
幼馴染が成長し合い高校野球で熱い戦いを繰り広げる野球漫画は色々とありますが、恋愛漫画としても楽しく読める漫画はあだち先生しか書けないのではないのでしょうか。
「H2」は野球漫画としても、恋愛漫画としても優れた作品です。
高校野球を舞台に、幼馴染で別々の高校の野球部に所属する国見比呂と橘英雄、比呂と幼馴染の雨宮ひかり、比呂のクラスメートの古賀春華による四角関係を描いています。
ストーリーの最後は、親友でもありライバルでもあるピッチャー比呂とスラッガー英雄による直接対決がメイン。野球でも恋愛でも全力で戦い抜く姿には、これぞ青春といった完走しか浮かびません。
投手と打者としての決着、恋愛の決着がつく最終話は、なかなか切ないので未読のかたには読むのをオススメします。
同時代に松坂大輔選手が西武ライオンズで高速スライダーを武器に活躍していたこともあり、物語の終盤で主人公の比呂もスライダーを投げるようになるのが時代を感じさせます。
GS美神 極楽大作戦!!
霊や悪霊による被害が一般的に認識されている世界では、それらを退治できるゴーストスイーパーが高ステータスなお仕事。ゴーストスイパーは国家資格でもあり、その中でもプロ中のプロである美神令子、その助手(アルバイト)の横島忠夫、地縛霊のおキヌによるオカルトコメディー漫画が「GS美神 極楽大作戦!!」
当初は1話完結型のオカルトをテーマにしたギャグ漫画でしたが、回を重ねるごとにストーリーはシリアスなテイストも増えバトルやアクション展開も増えていきました。ギャグ要因でしかなかった助手の横島くんが成長していく姿に読者は胸が熱くなりました。
美神さんがワンレン・ボディコンでセクシー路線のキャラクターだったのも、連載がスタートした1991年当時の流行が反映されていて興味深いですね。
じゃじゃ馬グルーミン★UP
ゆうきまさみ先生による「週刊少年サンデー」での長編連載漫画で、「究極超人あ〜る」「機動警察パトレイバー」の次作となったのが「じゃじゃ馬グルーミン★UP」です。
北海道旅行中のアクシデントから競走馬の生産牧場で働くこととなった都内の進学校に通う高校生・久世駿平が主人公。北海道の牧場を舞台に、競走馬や生産牧場に関わる人たちとの触れ合いを経て思春期の駿平が1人の大人として成長していくストーリーを描いています。
前作の「機動警察パトレイバー」、前々作「究極超人あ〜る」とも全く異なるジャンルでありながら、取材力の高さやコメディ部分とのバランスの良さなどが光る傑作漫画です。
帯をギュッとね!
(出典:小学館)
通称「帯ギュ」と呼ばれていた柔道青春グラフィティ漫画「帯をギュッとね!」
昭和の柔道漫画といえば熱血でスポ根ものと呼ばれる作風が一般的でしたが、小林まこと先生の「柔道部物語」の登場から作者が柔道を実際に習ってことがあり、ギャグの展開があることで徐々に変わっていきました。
1990年代に入ると「帯をギュッとね!」が登場し、「NEW WAVE JUDO COMIC」と銘打たれている通りに柔道漫画をよりスタイリッシュに爽やかに進化させました。
柔道部の創立から全国大会を目指す主人公たちのストーリーは青春そのもの。さらに柔道経験のある河合克敏先生の丁寧な技の描写もあって、実際に柔道を習い始める人も出たりもしました。
若干マイナーな題材を選びつつ、そこでの人間ドラマや成長ストーリーを描く流れは次作のボートレースを題材にした「モンキーターン」にも継承されています。
神聖モテモテ王国
ラブコメやスポーツ漫画の連載は数多くあるものの、ギャグマンガの代表作が思い出しにくい「少年サンデー」において、とびきりのシュールなギャグ漫画を描いていたのが「神聖モテモテ王国」です。
自称宇宙人のファーザーと、ファーザーに息子と認識されているオンナスキー(学ランに眼鏡)が女性にモテるために活動していくのが一応のストーリーとされているものの、話の内容は破綻しがちで、漫画のセオリーや基本からも外れた展開に終始することが多々ありました。
連載は1996年から2000年まで行われ、その独特でシュールすぎる内容は沢山のファンをゲットするまでには至りませんでしたが、マニアックで物好きなサンデー読者に愛好されていたといいます。
設定を知らずに読むと、自称宇宙人で上半身にマントを纏い、下半身は白ブリーフに裸足の中年男性が坊主の学生服の男とシュールなコントを繰り広げているようにしか見えない怪作です。
まとめ
「週刊少年サンデー」にはどの時代においても傑作・名作の漫画揃い。
1990年代であってもそれは変わらず、王道の少年漫画あり、ラブコメあり、熱いスポーツ漫画ありと幅広いジャンルで面白い漫画が読めたものです。
1990年代の「週刊少年サンデー」に掲載されていた漫画は今読んでも面白い作品ばかり!子供の時に読んでいた人も、読んだことがない人でも一度は読んでみることをおすすめします。きっと楽しめるはずですよ。