2000年以降はAKB48など48グループの出現、2010年以降はももいろクローバーの台頭や乃木坂46、欅坂46などの通称坂道グループが大型ロックフェスに出場するなど、現在もアイドルカルチャーは人気です。
それに比べると90年代はアイドル冬の時代と呼ばれ、80年代と2000年代というアイドル隆盛の時代に挟まれた谷間の時代でもありました。
しかし振り返ってみると90年代のアイドルはビジュアルや歌やダンスのスキルも高く、ドラマや映画に出演とマルチに活躍する人が多い印象があります。
今回は冬の時代に誕生した90年代アイドルを振り返ってみたいと思います。
期間としては1987年ごろから90年代後半までが日本の女性アイドル冬の時代とされています。
80年代は世の中がアイドルに熱狂していた時代で、特に85年から87年ごろがそのピークとされています。
何故アイドル冬の時代が到来したかといえば、85年に国民的アイドル歌手の松田聖子が神田正輝と結婚、翌86年には松田聖子と同じ事務所の岡田有希子が自殺、テレビの歌番組の減少、そしてバブル時代への突入が大きな理由として挙げられています。
アイドルとアイドルファンを取り巻く環境が大きく変化していきました。
バブルの好景気に日本国民が後押しされ、多くの独身男性がそれまで疑似恋愛的に楽しんできたアイドルよりも、実際に付き合える現実の女性へと対象が移り変わったのです。
バブル景気によって国民のリア充への傾倒がアイドル冬の時代への布石となり、87年以降から90年代はグループアイドル不遇、アイドル受難の時代と変遷していったのです。
熱狂の後には騰落がある。
80年代はあんなに皆が熱狂したアイドル文化も徐々に熱が冷めていき、気が付けばテレビの歌番組はなくなり、アイドル氷河期と呼ばれる時代の到来。
90年代はアイドル冬の時代と呼ばれて久しいですが、令和になって振り返ってみると90年代にアイドルでデビューした人達が現在も活躍しているケースは目立ちます。
現在もアイドルを続けている人はさすがにいませんが、女優やタレントとしてメディアに露出していることを見ると、90年代のアイドル熱が冷めた時代であってもちゃんと人材は輩出していたのではないでしょうか。
90年代後半になると再びアイドルブームがやってくるのですが、それ以前にデビューした人達を振り返ってみましょう。
3M
日本の芸能史では同世代で同ジャンルの人達を御三家、○○トリオ、三人娘などと呼ぶことがポピュラーでした。
3Mとは、宮沢りえ、牧瀬里穂、観月ありさのイニシャルがMだから付けられた呼び名です。
昭和世代の括り方よりはシンプルでスタイリッシュな感じがしますが、アイドル冬の時代ならではの素っ気なさも同時に感じさせます。
この3人はデビュー当時はアイドル的な要素もありましたが、キャリアの中心はドラマ、映画、CM、舞台といった女優やタレント業で、現在でも精力的に活動しています。
宮沢りえ
(出典:女性アーティスト・女性バンドまとめ)
宮沢りえさんは、1989年9月に「ドリームラッシュ」で歌手デビュー。
芸能界自体は1984年のテレビCM出演が正式なデビューとされています。80年代に子役としてデビューし、90年代は歌にテレビにと大活躍でした。
1990年にはシングル2作目「NO TITLIST」、1stアルバム「GAME」を小室哲哉プロデュースで発表。
「NO TITLIST」は自身が出演したフジテレビ系ドラマ『いつも誰かに恋してるッ』の主題歌でもありました。
子役で芸能界デビュー後は、歌手、タレント、女優としても大活躍。ふんどしカレンダーや18歳の時にヘアヌード写真集『Santa Fe』を発表して社会に衝撃を与えましたがNHKの番組を降板する事態にも発展しました。
当時の現役人気力士の貴乃花とも交際していましたが、破局後は手首を切っての自殺未遂、アルコール依存症、拒食症に悩まされることに。その後はLAのクリニックに入院して摂食障害の治療を受けて芸能活動は休止状態へ。
これが1996年までの出来事なので、いかに宮沢りえさんの人生が波乱万丈かわかりますね。
その後、2002年に入りドラマや映画に復帰。苦悩を乗り越えていく姿は、多くの若い女性から憧れの存在となっています。
牧瀬里穂
(出典:smule)
歌手デビューは1991年10月で、曲は『Miracle Love』(竹内まりや作詞・作曲)でした。このシングルは30万枚を超えるヒットを記録しています。
歌手デビューよりもCMや映画での活動が早く、アイドルというよりかはマルチに活躍していたタレントの1人といったところでしょうか。
歌も印象的ですが、一番注目を集めたのはJR東海・クリスマス・エクスプレスのCMという人も多いことでしょう。
2008年にはBapeの創始者のひとりでもあるファッションデザイナーでレコードプロデューサーのNIGOさんと結婚。数々のドラマや映画、舞台に出演し、現在も名実ともに実力派女優として活躍しています。
観月ありさ
(出典:だめなやつら FC2)
歌手デビューは91年に「伝説の少女」で。その後も「エデンの都市」「TOO SHY SHY BOY!」「happy wake up!」と続きます。
日本コロムビアから発売された「伝説の少女」では、日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞。1997年にエイベックスへ移籍。
シングル、アルバム総売り上げ枚数は300万枚を越えており、小室哲哉が主要なプロデュースを行っていたのも特徴です。
子役としては80年代から活動、1991年にフジテレビ系ドラマ『もう泣かない』で女優デビュー。その後、人気シリーズ『ナースのお仕事』に出演し、4シーズンに渡って製作されることに。
『ナースのお仕事』は映画化もされ、観月さんは日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しています。また映画『ぼくんち』(2003年)では日本アカデミー賞最優秀主演女優賞にもノミネート。
歌手活動も曲に恵まれアイドル性も高かったのですが、女優としてのキャリアの方が注目されていますね。
アイドル冬の時代ではあったものの、過去の栄光よもう一度!とアイドルブームの再燃を狙ったプロジェクトや動きもありました。
それがフジテレビが運営していた『パラダイスGoGo!!』(1989年)に出演していたアイドル「乙女塾」です。
乙女塾
乙女塾はフジテレビの番組「パラダイスGoGo!!」に出演していたアイドルグループで、一期生から八期生まで続きました。
ソロデビューだけではなく、グループ内のメンバーを選抜してユニットやグループアイドルを組ませてデビューさせたりといった活動もおこなっていました。
乙女塾からデビューした代表的なアイドルやユニットにはCoCo、ribbon、Qlair、中嶋美智代さんなどがいました。
CoCo
大野幹代さん、三浦理恵子さん、瀬能あづささん、羽田恵理香さん、宮前真樹さんで結成された5人組で、乙女塾の中では一番人気があったグループ。
1992年に瀬能あづささん脱退後も4人で活動を続けていましたが、1994年に解散してしまいます。 アルバムタイトルのすべてが”S”で始まるなどのこだわりがありました。
発表したシングルには、「EQUALロマンス」「はんぶん不思議」「無敵のOnly You」「夢だけ見てる」などがあります。
三浦理恵子(CoCo)
三浦理恵子さんは、CoCoの中でも人気が高かったメンバーで、現在も芸能活動を続けています。乙女塾には2期生として参加、アイドルから女優へと転身してキャリアを成功させた1人です。
ribbon
ribbonはCoCoに次ぐ乙女塾から誕生したアイドルグループ。永作博美さんが在籍したことでも有名です。
永作さんと松野有里巳さん、佐藤愛子さんによる3人組グループでした。代表曲は、「リトル☆デイト」「そばにいるね」「あのコによろしく」などがあります。
特に解散発表や解散ライブはしておらず自然消滅的にグループとしての活動は終了しました。
永作博美(ribbon)
永作博美さんは94年にドラマデビュー後はブルーリボン賞、日本アカデミー賞など多くの賞を受賞している日本を代表する女優です。しかし歌手デビューは89年と俳優活動よりも早く、乙女塾の一期生でもあります。
中嶋美智代
元々はスターダムプロモーションで芸能キャリアをスタートし、乙女塾には三期生として参加。91年に乙女塾からソロデビューしましたが、それ以前はribbonでのデビューも考えられていたそうです。
花島優子
花島優子という名前に覚えがなくても『美少女仮面ポワトリン』のヒロインといえば思い出す人も多いのではないでしょうか。花島さんも乙女塾出身の芸能人で、乙女塾三期生で90年にソロデビューをしています。
90年代に関する記事について
桜っ子クラブさくら組
アイドル冬の時代に生まれたグループアイドルとしてアイドルファンに人気だったのが桜っ子クラブさくら組です。
グループ誕生の経緯は、森脇健児さんと光GENJIの内海光司さんが司会を務めていたバラエティ番組『桜っ子クラブ』でのメインキャラクターとしてでした。
91年から94年まで活動を続けていましたが、このグループ自体を覚えている方も少数かもしれません。
しかし、井上晴美さん、加藤紀子さん、菅野美穂さん、中谷美紀さん、中条かなこさんなど多くの有名芸能人を輩出しているグループなんです。
ちなみに『桜っ子クラブ』では若かりし頃のSMAPがレギュラー出演していたことでも有名です。
井上晴美
井上晴美さんは、91年6月に「ふりむかないで」で歌手デビュー。『桜っ子クラブ』の中では最初に売れだしたメンバーです。グループ解散後は主にグラビア活動を中心に人気でした。
加藤紀子
加藤紀子さんは、92年に「今度私どこか連れていって下さいよ」でデビュー。グループへの在籍期間は一番長く、グループ解散後はバラエティ番組への出演で人気でした。
菅野美穂
92年に『桜っ子クラブ』加入前はマイナーな芸能オーディションでデビュー。
『蓮井朱夏』名義で歌った「ZOO 〜愛をください〜」は50万枚を超えるヒットとなりましたが、菅野さん自身は歌が得意ではないそうで歌手活動は行っていません。
グループ終了後はタレント、女優としてキャリアアップ。途中、ヌード写真集を出したりもしましたが現在は日本を代表する大女優の1人として活躍しています。
中谷美紀
デビューは91年の桜っ子クラブさくら組内ユニットの『KEY WEST CLUB』にて。
デビューの経緯は、番組内のコーナー『隣のマブ子ちゃん大賞』という近所の可愛い子を紹介する素人企画で優勝した2人を歌手デビューさせるというものでした。
この時に優勝した1人が中谷さんで、実際に桜っ子クラブさくら組に加入しました。ただこの規格に出演している時には、中谷さんはすでに芸能事務所に所属していたのでいわゆる出来レースだったそうです。
中条かなこ
ソロデビューは91年6月で、桜っ子クラブさくら組在籍時は学園祭やグラビアでも活躍しました。グループ終了後もタレントとして活躍しましたが96年に結婚を機に芸能界を引退しています。
持田真樹
人気ドラマ「高校教師」に出演していたことでも御馴染みの持田真樹さんも桜っ子クラブさくら組所属メンバーでした。ドラマ出演はグループに在籍しながらのことでした。グループ内では妹的ポジションで人気があり、CDデビューは93年。女優としてのキャリアの方が有名な方ですね。
東京パフォーマンスドール
アイドル冬の時代、乙女塾、桜っ子クラブさくら組と並んで人気のグループが東京パフォーマンスドールでした。
元々は90年に木原さとみさん、篠原涼子さん、川村知砂さんの3人組としてデビュー、その後は東京パフォーマンスドールに改名してライブハウス・原宿Ruidoを中心としたライブパフォーマンスと、テレビ番組への出演という活動内容で人気を博していきます。
東京パフォーマンスドールには穴井夕子さん、市井由理さん、篠原涼子さんなどが在籍、後に市井さん、篠原さんがミリオンセラーを実現するなど先見の明がありすぎたグループでもあります。
穴井夕子
元々、穴井裕子さんは複数のアイドルオーディションに応募しているオーディション嵐として有名でした。
たまたま立ち寄った東京パフォーマンスドールのライブにてスタッフから加入を進められてそのまま新メンバーとなってしまいアイドルとしてのキャリアをスタートすることになります。
東京パフォーマンスドール脱退後はバラエティ番組を中心に活動していました。
市井由理
もともとは乙女塾の一期生としてCDデビューをしていた市井さん、その後は東京パフォーマンスドールでの活動をおこないます。
東京パフォーマンスドールを卒業したあとは94年にヒップホップグループ『EAST END×YURI』で「DA.YO.NE」、95年に「MAICCA〜まいっか」「いい感じ やな感じ」を発表していくこととなります。
「DA.YO.NE」はミリオンミットを実現、ダヨネ~の連呼は凄い流行りましたね。
アイドルからヒップホップグループへの転身も当時としては異例でした。
篠原涼子
篠原涼子さんがアイドル出身であることは今となっては信じられない位に大女優として活躍されています。
篠原さんは東京パフォーマンスドールの結成メンバーでもあり、グループ在籍時から単独でドラマやバラエティ番組にも出演していました。
特に有名なのは『ダウンタウンのごっつええ感じ』で、令和の今では考えられないツッコミを芸人でもないのに受けまくる姿が人気でした。
ミリオンヒットとなった「恋しさと せつなさと 心強さと」(篠原涼子 with t.komuro)をリリースした時もまだ東京パフォーマンスドール在籍時でした。
94年に東京パフォーマンスドールを卒業した後は歌手活動、女優活動へとシフトしていきます。
近年は、2005年にミュージカル俳優の市村正親と結婚、そして2021に離婚。
篠原さんはキャリアのスタートがアイドルでありながら、歌手、バラエティタレント、女優と全ての芸能ジャンルで成功している稀有な人物でもあります。
今回はアイドル冬の時代と呼ばれた90年代のグループアイドルを紹介してみましたがいかがだったでしょうか。
冬の時代や氷河期などと90年代のアイドルカルチャーは呼ばれていますが、実は令和の現在でも活躍する人材を数多く輩出しているんです。
時代背景もあってスタートがアイドルであっても活動内容がタレントや女優、グラビアなど多岐に渡っているのも90年代の特徴ですね。
また90年代に学生時代を過ごした方にはテレビ番組とアイドルがセットになっているのも御馴染みな風景ではないでしょうか。