スピーディーでアグレッシブなギターサウンド、お腹に響くようなバスドラムのリズム、そしてハイトーンなボーカルのシャウト。
激しい音楽って、ストレスを感じた時に聴くとスカッとして最高ですよね。
ヘヴィでアグレッシブな音楽はたくさんあるけど、ジャンルに分類するとしたらヘヴィメタル?ヘビメタ?パンク?になるのでしょうか。
ヘヴィメタルと他のロックとの違いは?
ヘヴィメタルの定義って何?
知らない人からすると色々と疑問が付きまといますよね。
今回は、ヘヴィメタルにフォーカスしてどんな音楽なのか?どんな歴史を辿ってきたかなどを紹介します。
ヘヴィメタルもロックの一種
ほとんどのひとにとっては、ブラック・サバス、レッド・ツェッペリン、ディープ・パープルなどのバンドのサウンドがヘヴィメタルでしょう。
しかし、現在のヘヴィメタルとは少しかけ離れているようにも感じます。ヘヴィメタルはどの様に生まれて、どの様に進化を遂げてきたのでしょうか。
ヘヴィメタルの特徴といえば、大きく歪んだギターのリフとコード、パワフルなドラミング、重低音の一角を担うベース アグレッシブなボーカルなどでしょう。
高い演奏技術を要する速弾きのギターソロもヘヴィメタルの楽曲では大きな特徴です。
ヘヴィメタルをヘヴィメタルたらしめる要素はエレキギターです。
ギタリストが いなければヘヴィメタルは成立しません。多くのバンドには 2 人以上のギタリストがいて、バンドはラウドで激しく、速く、アグレッシブな曲を演奏します。
ヘヴィメタルのボーカルスタイルは、メロディックな歌唱からアグレッシブなもの、デスボイスと呼ばれる独特のガナリ声、ダミ声で歌うものまで幅広くあります。
ほとんどのリスナーにとっては、ブラック・サバス、レッド・ツェッペリン、ディープ・パープルなどのバンドがポピュラーなヘヴィメタルでしょう。
そこからヘヴィメタルのスタイルは進化を続け、ヘヴィメタル内に多くのサブジャンルを形成して現在に至るまで枝分かれしています。
ヘヴィメタルのルーツは1950年代のミュージックシーンに遡ります。
ヘヴィメタルの台頭に影響を与えた音楽として挙げられるのは、1950年代初頭の重厚なギター リフを特徴とするブルースの楽曲やバンドです。
現在のヘヴィメタルの特徴でもあるギターリフはすでに1950年代にはブルースの手法として取り入れられていました。
これらブルースの曲には、リンク・レイのインストルメンタルソング「Rumble」、キングスメンの「Louie Louie」、ジェイムズ・コットンの「Cotton Crop Blues」が有名です。
ヘヴィメタル自体は、ロックの一ジャンルを指す言葉なので、ブルースやハード ロックの初期の作品からインスピレーションを得て進化したのも自然な流れなのです。
その後、1960年代のアシッド ロックやサイケデリック ロックなどのロックのサブジャンルの出現により、ヘヴィメタルのルーツがより明確になっていきます。
1960年代には、クリームの「Fresh Cream」やザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの「Are You Experienced?」などのリリースや、ブラック・サバスの初期の作品がヘヴィメタルの音楽形成に影響を与えたとされています。
また、イギリスのロックバンドキンクスが1964 年にリリースした「You Really Got Me」は、ファズの効いたギターリフが大きな特徴で、ヘヴィメタル以外にも後に出現するオアシスやブラーなどのブリットポップのバンドにも大きな影響を与えました。
1970年代には、ヘヴィメタルはブルースの影響は薄まり、モーターヘッドやアイアンメイデンのようなバンドがパンクロックの要素を取り入れることで、より楽曲をスピーディーにテンポを上げていました。
1980年代に入るとヘヴィメタルはより細分化して、モトリー・クルーやポイズンのようなグラムロックに影響を受けたバンドによるLAメタルのムーブメントが盛り上がりを見せるようになります。
1981年から放映が開始された MTVでは、より先鋭化してアグレッシブになったヘヴィメタルを取り上げたこともあり、メタリカ、アンスラックスなどのスラッシュメタルも人気になっていきます。
90年代には、ニルバーナやアリス・イン・チェインズに代表されるようなグランジ、オルタナティブロックが人気を席巻しましたが、一方でメタルファンは依然としてメタリカやパンテラのようなヘヴィでアグレッシブな音楽を支持していました。
ナインインチネイルズ、プライマス、マリリン・マンソンなどの新しいバンドは、ヘビィメタルに影響を受けながらも他の音楽ジャンルからの影響を取り入れた特徴的なサウンドを作り上げていました。
2000年代前半にかけてはニューメタルと呼ばれるバンド群が人気で、POD、Slipknot、Linkin Park、Limp Bizkit、Korn などのバンドが多くのリスナーから支持されました。
この頃になるとヘビィメタルとラップやヒップホップが融合されていること自体は珍しくもなくなり、かつてのブルースを起源としたヘビィメタルは影を潜めていきます。
現在成功しているヘビィメタルのバンドには、ブリング ミー ザ ホライズン、BABYMETAL、マストドンなどがありメインストリームでもアンダーグラウンドでも、ヘビィメタルは常に進化を続けているジャンルであることがわかります。
ヘヴィメタルが、ヘヴィメタルと呼ばれるようになったかは諸説あります。
一番有名なエピソードは、アメリカのロックバンド、ステッペンウルフが「Born To Be Wild」の歌詞で「Heavymetal Thunder」というフレーズを初めて使用したことに由来するものです。
他には、ヘヴィメタルの先駆者であるバンドが製鉄産業が盛んな都市から来た説です。
たとえば、ブラック・サバスはイギリスのバーミンガムで結成されたバンドです。バーミンガムは産業革命時から製造業、特に金属加工業が主要産業であった都市です。
ただバーミンガム出身のバンドが全てメタリックなギターサウンドを標榜していたわけではないので、この説は眉唾かもしれません。
ヘヴィメタルの種類
元々は、1950年代、1960年代のブルースやロックから影響を受けて形成されたとされるヘヴィメタルも時代を重ねるごとに分岐を繰り返しています。
現在では、色々なヘビィメタルの種類があり、リスナーは自分が好きなヘビィメタルを見つけて聴くことがスタンダードになっています。現在まで、ヘヴィメタルにはどんな種類があるのでしょうか。
NWOBHMは、80年代以降のほぼすべてのヘヴィメタルに影響を与えたといっても過言ではありません。
NWOBHMのバンドは、ブラック サバスのようなヘビィメタルのオリジン達のサウンドから、ロックやブルースの影響を取り除き、今日私たちがよく知っているいわゆるメタルサウンドを作り上げたヘヴィメタルのパイオニア的存在です。
NWOBHMの代表的なバンド:
デフ・レパード、ダイアモンド・ヘッド、アイアン・メイデン、ジューダス・プリースト、サクソンなど
NWOBHM から進化し、よりヘヴィで過激になったジャンルがスラッシュメタル。
速いギターとバスドラム、アグレッシブでありながら分かりやすいボーカルが特徴です。ヘヴィメタルで人気のあるバンドはスラッシュメタルとしてキャリアを始めたケースもおおくあります。
スラッシュメタルの代表的なバンド:
アンスラックス、メガデス、メタリカ、スレイヤーなど
歪んだノイズまみれのギターとセサミストリートに出てくる「クッキー モンスター」のようなダミ声で唸り声のようなボーカルスタイルで、スラッシュメタルをさらにアグレッシブにしたような重くて禍々しいサウンドが特徴的です。
後にボーカル以外はメロディックになったりシンフォニックになったりと進化していきました。
デスメタルの代表的なバンド:
カニバル・コープス、デス、ディーサイド、モービッド エンジェル、カーカス、アークエネミーなど
「ハードコア」からも影響を受けたヘヴィメタルのサブジャンルで、スピーディーでエネルギッシュ、アグレッシブなサウンドはスラッシュ メタルに類似しています。
ハードコアメタルの代表的なバンド:
キルスイッチ・エンゲージなど
デリンジャー・エスケープ・プランやホワイトチャペルなどのグループに代表されるデスコアは、ダウンチューンされたギター、唸りを上げるボーカルスタイル、ハードなギターリフなどが特徴です。
デスコアの代表的なバンド:
デリンジャー・エスケイプ・プラン、ホワイトチャペル
スラッシュメタルやデスメタルの影響を受けたジャンル。
無調のギターリフとバスドラムのブラストビートを組み合わせたサウンドからその名前が付けられました。
ボーカルはデスメタルに似ています。
例: ナパーム デス、テロライザー、初期のカーカス
LAメタルは、グラムロックのポップな部分にインスパイアされたギター リフ、ヴォーカル ハーモニー、メイクやヘアスタイル、コスチュームのバンドのこと。
グラムロックの要素を上手くヘヴィメメタルに落とし込んで大ブームとなりました。LAメタルの全盛期は1980年代で、特にラジオからヒットが生まれる現象が特徴的です。
LAメタルの代表的なバンド:
モトリー クルー、ポイズン、シンデレラ、ストライパー、ドッケン、ラットなど
全てがヘヴィメタルの影響下にあるわけではありませんが、ヘヴィでダウナーなサウンドでヘヴィメタルとの共通点を多く持ちます。
グランジは1990年代初頭にアメリカのシアトルで盛り上がりを見せ、太平洋岸北西部のバンドが多く存在していました。ヘヴィメタルのカウンターカルチャーとしての部分もあり人気を博しました。
グランジの代表的なバンド:
ニルバーナ、アリス・イン・チェインズ、サウンドガーデン、パールジャムなど
ニューメタル(Nu Metal)
ニューメタルは、ファンク、インダストリアル、ヒップホップ、エレクトロニック ミュージックなど、メタル以外にも幅広い音楽ジャンルの要素が取り入れられています。ギターソロがなかったり、ボーカルは歌唱よりもラップすることに重点を置いています。
ニューメタルの代表的なバンド:
リンキンパーク、パパ・ローチ、レイジ ・アゲインスト ・ザ・ マシーンなどがあります。
ヘヴィメタルとプログレッシブロックの融合であり、曲の構成が複雑で変拍子を取り入れられています。
曲の分数が10分を超えることもあり、プログレッシブ メタルのアルバムはコンセプト アルバムになっていることも多く、全体テーマやコンセプトに沿って歌詞や曲が作成されています。
プログレッシブメタルの代表的なバンド:
ドリームシアター、フェイツウォーニング、クイーンズライチなど
まとめ
ルーツを辿れば1950年代のブルースに行きつくものの、その片鱗を見つけることが難しいくらいに現在のヘヴィメタルは進化を遂げました。
沢山のサブジャンルに枝分かれしたヘヴィメタルという音楽は非常に多様性に富んでいて、一言では言い表せないほどに複雑化しています。
これからヘヴィメタルを聴いてみようとおもった初心者の方には難しく感じてしまう人もいるかもしれませんが、まずは自分が好きになったヘヴィメタルの曲やバンドを知るだけでもOK。耳が慣れてきたらルーツを辿ってみるとさらに深みにハマれますよ。